2013年、老朽化した東海道新幹線土木構造物の大規模改修工事がスタートしました。1964年の開業以来東海道新幹線を支えている高架橋やトンネルに対し、予防保全を目的とした経年劣化の発生自体を抑える対策工事です。JR東海グループの唯一の商社である当社が担うのは工事に必要な建設資材の調達と供給で、その一環として高架橋にある「支柱レス防音壁」の安定供給を行っています。
東海道新幹線の工事は、通常運行終了後の深夜時間帯に行われます。深夜時間帯の数時間という限られた時間で工事を計画どおり進めなければならず、納品遅れがあると工事の遅延を発生させてしまいます。このプレッシャーの中でも、建設資材を計画どおり安定的に納品して工事を滞りなく進め、お客様が安心して東海道新幹線をご利用いただけるように資材供給面から支えること、これが私たちの使命なのです。
東海道新幹線大規模改修工事とは
前職は物流会社で、鉄道とは無縁の業界でした。仕事に携わっていく中で、安全を支える鉄道工事のための重要な部品の供給には、どれ一つ欠けても工事の進捗に影響を与えてしまう大事な使命があることを、身に染みて実感するようになりました。東海道新幹線大規模改修工事は、東京から新大阪までの広大なエリアにわたる工事であり、限られた時間のなかで手配する物量も関わる人の人数も桁違い。不安はありましたが、覚悟を決め挑んでいきました。
1964年から日本の大動脈として走り続けてきた東海道新幹線。その安全安定輸送を今後も継続するため、東海道新幹線大規模改修工事は2013年に始まりました。工事の内容は東京から新大阪までの500km以上の区間の高架橋やトンネルのパーツの取替や補強を行うもので、JR東海グループの関係各社の総力を挙げて取り組むビッグプロジェクト。その中で私に与えられたミッションは、列車が走る際の防音対策として高架橋に設置される「支柱レス防音壁」を、東京から新大阪間までの各工事現場へ安定供給することでした。

工事計画変更での教訓を胸に
建設工事は、予定通りに進まないこともあります。資材の納期管理を徹底するため、仕入先のメーカーに建設工事計画を示したうえで「支柱レス防音壁」を計画的に生産するように依頼していましたが、計画が大きく変更となってしまい、一時的に仕入先が「支柱レス防音壁」の過剰な在庫をかかえる事態に直面しました。
このままでは仕入先からの信頼を失い、今後の工事に悪影響を及ぼしかねません。上司と相談し、当社が仕入先から在庫を買い取ることを決断しました。建設現場を自分の目で見ていたら、もっときめ細かく正確に工事の進捗状況を把握することが出来たと後悔の念に苛まれましたが、二度と同じ轍を踏まないと自分に言い聞かせ、前を向くことができました。
当社の役割を愚直に果たす
同じ工事に携わっても、仕入先、ゼネコン、工事現場、それぞれの立場の人が見ている景色はまったく違います。だからこそ、商社として間に立つ私たちが資材置き場などの在庫状況を自分の目で見て、現場のリアルな情報を集約し、JR東海グループの一員として共有できる施主の思いを、工事に関わる関係者に適宜適切に情報提供することにより、商社ならではの「潤滑油」的な機能を果たし、工事を円滑に進めることができると自負しています。一つの建設工事が終わって、次の建設工事で以前一緒に働いた方からお声かけいただくことがありますが、このようなお声かけが増えるようにこれからも取り組んでいきたいと思います。
今後に向けて
当社が納品した何十万台もの「支柱レス防音壁」は、東海道新幹線の安全安定輸送を担う重要なパーツです。出張で東海道新幹線を利用する際、車窓から「支柱レス防音壁」を見ると、日々の東海道新幹線の運行を支えている大規模改修工事の一翼を担っているのだ、という実感がわいてきます。あと数年で大規模改修工事は完了する見込ですが、最後まで携わり、工事完遂に貢献したいと思っています。
Projects
資材事業
東海道新幹線を未来につなぐための
建設資材供給
コロナ禍を経験し、JR東海グループ各社のオフィスや休憩室への考え方が大きく変わりました。「働く人ファースト」の考えでオフィスや休憩室をゼロベースで見直す。当社は、JR東海グループの商社として、本腰を入れてオフィス環境改善に取り組むことにしました。

新型コロナ後のニーズに応える
私は2019年の入社以来、JR東海グループ各社への什器類の営業を担当してきました。当初は机や椅子の老朽化に伴う単純な入れ替えがメインで、お客様と一緒にカタログを見ながら商品を決めて価格交渉して納品するという仕事でした。しかし新型コロナの感染拡大が落ち着いてくると、各社は在宅勤務に慣れてしまった社員を会社に呼び戻す、事業を再開するため採用を強化するといった新たな課題に直面するようになりました。「職場環境を見直したい」「フリーアドレス導入のサポートをしてほしい」、そんな相談が増えてきました。「出社したくなるオフィスにしたい」「より快適に働ける環境を整備したい」。什器の提案だけでなく、空間作りそのものを提案するという新たな挑戦が始まりました。

プロジェクトの始動
2020年、最初の大きなプロジェクトが動き出しました。あるグループ会社から車両所や駅の清掃現場の休憩室が狭く、また設備面も老朽化して全体として暗いので職場環境を改善してほしいという要望をいただきました。設備は古く、働く人たちが休憩や待機をする場所ながら、快適とは言えない状況でした。さっそく、什器メーカーや内装業者と連携しながら、限られたスペースを最大限居心地の良い空間にするための取組が始まりました。
その会社の現場には、清掃用品や制服、機械などの商品の納品立会等で度々訪問していましたが、改めて本件について担当者と議論してみると、整理整頓、狭いエリアゆえの動線の整理、古くなった壁紙天井の一新などに高いニーズがあることがわかりました。そこで動線を考慮した上で、明るいオレンジとグリーンの什器を選定し、床天井は柄模様とするなどの提案を行い、採用いただきました。単なる見た目の改善ではなく、働く人の立場にたった空間づくりがスタートしました。
働く人々を笑顔にする職場に
完成した休憩室を見たベテランのパートさん達の目に涙が浮かんでいました。本社よりも現場の職場環境改善を優先してもらったこと、リニューアルした休憩室も働く人のニーズに十分に配慮していることなど社員を大切にしている会社の姿勢を目にし、それが胸を打ったのだと思います。この職場環境改善は、大きな反響を呼び、JR東海グループ各社から相次いで相談をいただけるようになりました。
今後に向けて
新型コロナが落ち着き再び、オフィスへの出社志向が鮮明になってきました。また少子高齢化が進み労働力不足の問題も各社を悩ませています。これら課題克服のため、各社とも魅力ある職場作りに懸命に取り組んでおり、当社はこの案件の後も、グループ会社はもちろんのこと、グループ外も含む多くの会社の職場環境改善、働きやすい空間の提供を行ってきました。
「新たな解を届ける」という企業理念にもあるとおり、今後も俯瞰的な視点で個々お客様の課題を掘り下げ、お客様の課題を解決できる提案をしていきたいと思います。
Projects
ソリューション事業
"什器販売"から"空間提案"へ、
休憩室改善への挑戦
昨今のSDGsの重要性の高まりのなかで、JR東海グループとしてもリサイクル事業への取組は課題でした。様々な検討を重ねたなかで、引退する東海道新幹線の車両のパーツの再利用が、一定のボリュームも確保でき、環境保全にも効果があるのではないかという結論に至りました。
東海道新幹線の車両のボディは主としてアルミで構成されており、このアルミを再生することで様々な用途に活用できるのではないかと考えました。再生アルミはバージンアルミと比較して製造時のCO₂排出量が格段に少ないというメリットも踏まえ、JR東海とも協業して2021年に「東海道新幹線再生アルミ事業」がスタートしました。この事業の担当者のE課長代理の挑戦が始まりました。
新幹線再生アルミプロジェクト始動
東海道新幹線の再生アルミの商品を何にするのか、ビジネスパートナーをどこの会社にするのか、商流のなかで当社をどこに位置づけるのか、採算ベースにのるのか等検討事項は山ほどありました。これまで事務用品や食品の取扱いの経験しかなかった私は、アルミの成分規格や再生アルミのビジネス化のための法律上必要な手続きを猛勉強、疑問点は上司や取引先の担当者にも積極的に聞いて解消しながら、仕事を前に進めていきました。
東海道新幹線再生アルミ事業は個人のお客様を意識した「グッズ」開発から開始しました。最初の商品はネクタイピン、再生アルミを使って東海道新幹線車両のミニチュア版を作り、加工を施してネクタイピンに仕上げるもの。当社の役割は引退した車両ボディのチップを仕入れ、高純度のアルミを抽出する工程を経てメーカーに再生アルミを販売すること、そしてできた製品(ネクタイピン)をECサイトで販売すること。社内外の多くの関係者の協力をいただき販売を開始できたときは感激もひとしおでした。このときに「東海道新幹線再生アルミ」の商標権取得の業務にも携わりました。

次なる展開
個人のお客様向けに、ミズノとタイアップして小学生の軟式用金属バットの開発に取り組みました。金属バットは安全性考慮のためアルミの成分配合に基準があり、当社が提供する東海道新幹線再生アルミをその基準に近づけるため、ミズノや協力会社と連日試行錯誤を重ね、ついに製品化にこぎつけることができました。約1,500本のバットが数日で完売という反響でした。
再生アルミ商品の評価が高まるなかで、JR東海内では東海道新幹線の新製車両のボディに再生アルミを使おうということになり(CAR TO CAR事業)、当社から廃棄車両のボディチップを車両ボディメーカーに販売することになりました。販路拡大が進み、徐々に手ごたえを感じるようになりました。
建材需要も開拓、取引の大幅増加に
世の中の認知が進み、東海道新幹線再生アルミを建材として使いたいというお声かけを数多くいただくようになりました。高級マンションやホテルのアルミサッシ、大都市圏の大型ビル内のルーバーやスパンドレル、大手私鉄主要駅内の内装材等。当社再生アルミチップの供給先は広がり、商売規模を拡大することができました。今では、日本有数の大手デベロッパー会社、大手メーカーとの商談も頻繁にありますが、誠心誠意に取り組むという初心を忘れず日々業務に励んでいます。これはどこにも負けない強みですが、当社の再生アルミ事業は、過去のどの車両で使われたかアルミの出自が明確で、この点が信用を生み、大手企業にも安心感を与えているのかもしれません。

今後に向けて
東海道新幹線の引退車両はいつでも無限に存在するわけではありません。したがって東海道新幹線の再生アルミ量にも自ずと限りがあることになります。そんな問題意識から新幹線以外でも再生アルミ事業をもっと拡大するためにできないかと考えるようになりました。他鉄道会社の引退車両や他業種のアルミも取り込み、より大きなアルミリサイクルの商流を形成していく、そんな目標をもって今後も精力的に取り組んでいきたいと決意を新たにしています。
Projects
ソリューション事業
JR東海グループの
SDGsを担う
東海道新幹線再生アルミ事業
「当社のEC事業をテイクオフさせたい。培った小売の経験を貸してくれないか」。前職時代から知り合いだった当社管理職(当時)から声をかけてもらい、この事業に参画することになりました。当社独自のEC(BtoC事業)を展開する。JR東海ならではの素材である、東海道新幹線の引退車両のボディ(アルミ)や窓枠(ポリカーボネート)、座席のもたれカバー、未だ使用されていない東海道新幹線の座席シートを使って良い商品ができないか、挑戦の日々が始まりました。
この事業を牽引するのは、アパレル業界で培った発想力と人脈を武器に新境地を切り拓くО課長。異業種の優良企業とのコラボによる斬新な商品開発とECサイトのみならず実店舗販売への販路拡大を展開し、SDGsも考慮しながらJR東海グループの商社が個人のお客様に新たな価値をお届けしています。

BtoC事業 開始
2023年4月に当社に転職、JR東海グループの商社がいかにEC事業を展開していくのか起案し、実践するのが私のミッションでした。他社のサイトとの差別化、商品開発でいかにJR東海らしさを出すか。新しい同僚との議論のなかで、東海道新幹線の部材を使って独自の商品開発ができないか、アパレル業界の30年間の経験と人脈をフルに活用しての戦いが始まりました。

未知への挑戦 一流ブランドとのコラボ
東海道新幹線の車両に使用されている素材をいかに商品に昇華させるのか。私の答えは、まったく異なる分野のブランドと掛け合わせ、その意外性を追求することでした。まずはゴルフブランド「DECEMBERMAY」とのタイアップ。東海道新幹線最新車両N700Sの普通車座席のモケット(生地)を使用してゴルフクラブのヘッドカバーを開発しました。明るい青の映えるデザインの耐久性に優れた良質な商品ができあがりました。私たちの挑戦の第一歩、少し形が見えてきました。
次なる挑戦は日本のバッグブランド「PELLE MORBIDA」とのコラボ。N700Sのグリーン車座席のモケットを使用してバッグやポーチを開発しました。バッグには東海道新幹線の再生アルミを使用したオリジナルのタグもつけることで、バッグがあたかも"小さな東海道新幹線"と思っていただけるような商品に仕上げました。一般的に鉄道素材の商品を購入されるお客様は鉄道がお好きな方が中心ですが、この商品は「PELLE MORBIDA」のブランド力とデザイン性により、鉄道を意識されないお客様にも支持をいただきました。
さらにSDGsも意識した取組として、東海道新幹線の引退車両のボディから製造した再生アルミを使って、人気のパティスリー「シェ・シバタ」とコラボして、スプーンを開発しました。またドイツのテディベアブランド「Steiff」とも交渉し、アップサイクルの座席シート生地を使用したラゲッジタグのコラボが実現しました。JR東海グループらしい、各分野の一流のブランドとのコラボによる上質さのある、かつSDGsも意識した商品ができあがったのです。

さらなる挑戦 販路拡大へ
ECのサイト名を2024年4月から"BLUE LINES EX"にリニューアルし「LIFESTYLE」×「PREMIUM」×「TRAVEL」というコンセプトをより明確にした商品構成とし、既にご紹介してきた商品もこのサイトで販売しました。世の中にはECサイトは星の数ほど存在しており、かつ巨大なサイトも複数あることから、その中での当社の販路拡大や鉄道を普段意識しないライト層への認知度の向上が大きな課題でした。
そこで当社の商品をリアル店舗でも販売することとし、「ハンズ」「書泉」「リニア・鉄道館」「京都鉄道博物館」「ビックカメラ」「ファミリーマート」といった集客力のある販売チャネルとも交渉して、当社商品の店頭販売を実現しました。結果として、この2年でこうした販売チャネルでの売上額がECの約2倍となり、この事業の採算性確保のメドがたってきました。
今後に向けて
事業が軌道に乗り、認知されてくると、他社からお声かけも増えてきて一層忙しくなってきました。最近ではメ~テレ(名古屋テレビ放送)のキャラクターである「ウルフィ」と、JR東海グループ企業が手掛ける人気スイーツ「ぴよりん」をコラボさせたぬいぐるみをイベントで販売し、2日で1,200個以上売り上げました。今後も人と人とのつながりを大切にしながら、走り続けていきたいと思っています。
Projects
コンシューマー事業
東海道新幹線と
異業種ブランドの協業による
新しいBtoCビジネスを創出